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『人口と日本経済 — 長寿、イノベーション、経済成長』

吉川さんによれば、日本人は人口減少ペシミズムに陥っているという。
人口が減るから経済成長はできないという思いにとらわれているという。

とくに企業は健全なオプティズムが失われ、投資を控えるようになってしまった。
実際に188ページに部門別貯蓄投資差額の推移というグラフが掲載されている。これは貯蓄の推移を家計、企業、政府で比較したものである。

かつては家計が貯蓄しており、企業は家計や政府より借金をして投資をしていた。2000年を境に家計と企業の貯蓄が逆転している。企業が投資をしないで貯蓄をするようになっている。

本書によれば人口の伸び率と経済の伸び率は無関係であることが示される。
74ページに日本の人口とGDPのグラフが掲載されている。人口の伸び率はほぼヨコヨコなのに対して、1915年以降から、GDPの伸び率が人口の伸び率とは乖離していく。戦後はさらに大きく乖離していく。このように戦前も戦後も人口とGDPの動きは無関係なのである。

経済成長率と人口の伸び率の差が労働生産性である。これは言いかえると一人あたりの所得となる。

この労働生産性を伸ばすのが新しい設備や機械を投入する投資とイノベーションである。イノベーションは新しい商品やサービスを生むプロダクト・イノベーションを指す。これが新しい市場を生み出し、今までにない需要を生み出す。

151ページにロジスティック曲線が示される。この曲線によれば新たに登場する商品やサービスは最初は成長率が加速するが、やがて変曲点を迎えて、どこかで成長率は鈍化してしまう。そのために絶えざるプロダクト・イノベーションが必要なのである。

イノベーションとはハードだけを指すのではなく、ソフトな技術も指すことに注意をしたい。具体例なソフト技術のイノベーションとしてスターバックスを例にあげている。

オーソドックスな経済学のエッセンスを解説しながら、結論は非凡である。鮮やかなエッセイ。

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